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『蒲団と達磨』古舘寛治×大石将弘 WEB対談

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まもなく本番を迎えるサンプル『蒲団と達磨』(作:岩松了 演出:松井周)。映像作品等への出演の傍ら松井作品を支えて来たサンプルの古舘寛治と、ままごと、ナイロン100℃など様々なフィールドで活躍されている大石将弘さんにお話伺いました。
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-まずは古舘さんの『蒲団と達磨』の戯曲を読まれての感想、または第一印象をお聞かせください。

古舘:オファーがあった時に、まず1回読んですごく面白いなと思いました。
(自分は)夫の役と聞いて、こういう役をやるチャンスっていうのはなかなか無いから、これを断ったら人生の判断力がない男だなって思われちゃう、これは断れないなっていうのが最初の印象ですね。岩松さんの初期の作品をリバイバルという形でやれるのも、俳優としてとても光栄だと思っています。

-初演は1988年ですから夫役を古舘さんで初めて観るというお客さんも多そうですね。

大石:初演の”夫”ってどなたが演じてたんですか?

古舘:柄本明さん。岸田戯曲賞(※1)を受賞したのは1989年なんだけど、1989年ってすごい年なんだよ。ベルリンの壁崩壊とか冷戦終結とか世界も大きく動こうとしてたり、日本はバブル崩壊直前の時代だったり。世の中的にも大きな起点となるような頃だったから、そういう背景を知ってもらって観るのも面白いかもしれない。今とは世相とか価値観がちょっと違う時代の戯曲だから。

-古舘さんの演じる”夫”はどんな役柄ですか?

古舘:そうだなぁ。あんまり言い過ぎてしまうと、そういう風に思って観られちゃうから言えないですけど、チラシにも書かれているように「爆発寸前の性欲」っていうのがすごくキーになってきます。それが戯曲としてはすごくリアリズムで描かれているので、その滑稽さをどう上手く表現出来るか…俳優としてどこまで出来るかというやりがいのある役ですね。

-古舘さんとしては理解しやすい役でしょうか?

古舘:もちろん全部が全部じゃないですけど、ある程度のところまでは凄くよく理解出来ますね。でも、すごくわかるからこそ、細かいところでわからなくなったり難しくなるところもあって、そこが結構、リアリズムを表現する上で重要になってくるんだと思います。

-では次に、大石さんの『蒲団と達磨』の戯曲を読まれての感想、または第一印象をお聞かせください。

(大石将弘)

大石:岩松さんの戯曲ってすごく難解なイメージがあって、「こんな台詞どうやって言うんだ」っていう台詞のオンパレードっていう風に勝手に思ってたんですけど、この『蒲団と達磨』はすごく読みやすくて、チラシにも書いてある”夫”の欲求不満というか性欲に対する分かりやすい何かがあるので面白く読めたというのが一番最初の印象ですね。でも、読み合わせや稽古が始まると、謎が結構出て来て…。これは岩松さんの戯曲はどれもそうなのかもしれないですけど、直截的に書かれてないことが多いんですよ。台詞としては書かれてないけど、水面下で起っていることとか、今まであったこととか。あと、本当に思ってることを言わなかったり、言いたいけど言えなかったりとかっていうことが多くて、だから「本当のところどうなんだろう?」っていうことをすごく考えますね。蒲団が敷いてある夫婦の寝室に登場人物が行き来するっていう状態を成立させるのが難しいなぁと思ってます(笑)。

古舘:(笑)。そこは確かにこの本の最も不条理なところだよね。あとは、実は舞台上は人がそこまで自由に動けないんだよね、蒲団敷きっぱなしだから。

大石:そうなんですよね、意外とアクティングエリアが制限されてて。でもそれが俳優に対する負荷というかストレスになってると思うんです。蒲団が敷いてあって思うように動けないストレスと、謎の気まずい空気に支配されていて。しかもそれぞれの欲求が満たされずに進んで行くので、やきもきするというか。そのストレスをお客さんにも感じていただけたら面白いんじゃないかなと思います。昨年、『水の戯れ』(※2)を観た時に、僕自身お客さん側でずっとストレスを受けてるような感じでした(笑)。

-大石さんの演じる”清水”はどんな役柄ですか?

大石:これもあんまり言うとネタバレになってしまうんですが、どちらかというと後半の方に…まとまった人数で出て来てきます。そこまでのじわっとした重たーい空気をかき混ぜに入って来て、一回お客さんを楽にしてあげらたらと思います。

古舘:お客さんの共感を得る役だよね。”清水”、”新倉”(※3)は。
外側から来て居心地悪そうにしてるっていうね(笑)。

-少しお話が変わりますが、大石さんは、1月に開催しましたサンプルワークショップに参加してくださいました。そこで少し垣間見ていただいたサンプルの作品作りについて少しお聞かせいただけますか。

大石:スタッフみんながそれぞれのプロフェッショナルでありながら、職種を越境して色々と意見を交わしながら作るスタイルというのは、前々から聞いたり、実際に作品を拝見して「面白いなぁ」と思っていましたし、ワークショップはほんとに面白かったです。
そもそも、スタッフさんがワークショップをやるっていう企画が凄くいいなぁと思いました。ドラマターグの野村(政之)さんの講座で「人の意見は面白い」というお話をされていて、チームで創作した作品に、観てる側がその解釈をフィードバックして、それを受けて作り直すみたいなワークショップで、それはすごいその言葉に表れていると思いました。人が勝手に解釈した妄想を面白がって何か次に活かす、専門領域じゃない人の解釈や発想をおもしろがって活かしていくというのが自由なサンプルの作品作りなのかなと思います。ままごと(※4)も劇場公演じゃない、島や道ばたでやる公演の時は割とみんなで考えたり作ったりするんですけど、面白いですね。いろんなアイディアを取り入れながら作っていくのは。

-松井さんご自身も影響を受けているという岩松さんの作品ですが松井さんの作品と
共通点などお気づきの点がありましたらお聞かせください。

古舘:難しい質問だなぁ(笑)。

-『通過』(※5)の再演では、特に冒頭部分が『蒲団と達磨』に似ているというご意見もあったとか。

(古舘寛治)
古舘:確かに『通過』は夫と妻がいて、夫は事故で性器を失っているんだけど性欲はあるっていう役で。そこの悶々とした会話から始まっていたから、確かにその関係性は似てるかもね。で、俺はそれを破壊しに来る側の人間だったんだけど、今回はそういう人は居ないねぇ。でも人物の関係性はちょっと似てるし、あとはひょっとしたら台詞が似てるってことなのかもね、もちろん松井は平田オリザの影響を強烈に受けているので、変な芝居を作りつつもずっと現代口語で台詞を書いていて、そうじゃないこともたまにするけど、基本的には口語。そういう意味でも『蒲団と達磨』は当時としては珍しいような口語で書かれた戯曲だと思うからね。ただ、口語とはいえ『蒲団と達磨』の口語は現代の口語と比べて、俺からするとすごく難しいというか、俺はこういう風には言わないよなっていうところが結構あったりするけど(笑)。

大石:え、すごく自然に言ってる風に見えてますけど、難しいなって思ってるんですか!?

古舘:うん、とっても難しい。そこはやっぱり岩松さんの口調は口語でこうなのか、それとも岩松さん自身も口語で書こうとしたけれども、こんな風に表れたってことなのか、どちらかはわからないけどね。例えば、細かいところでいうと…「〜だ。」で終わる台詞が結構あって、でも、なかなか「〜だ。」って言わない気がしいて「〜だよ。」とか「〜だよね。」とかにならない?

大石:確かに普段はなかなか言わないですね。「〜だろ。」とかになりますね。

古舘:でも、当時としては相当な口語体なんだろうなって思うし、その辺はやっぱり演じる上でも大きい共通点だなと思います。

-今回はサンプルを冠しての公演なので、そこにサンプルならではの要素が加わるとしたらどういうところだと思いますか?

古舘:やっぱり松井の作品ではないので、強烈なサンプルらしさっていうのは、普段のサンプルの公演からすると当然薄れるじゃないかな。それでも俳優の面から言えば、サンプルの俳優の中で特に何かを強烈に共有してるわけじゃないんだけど、舞台上で俳優同士がもの凄く敏感に影響し合ってるっていうのは、僕はいつもそれをやりたいと思ってるし、松井もそれを面白がってる。それぞれの人物が持ってる欲求同士には相反するものがあって、ぶつかって始めて問題が生じると思うんだけど、それを俳優みんなが敏感にそれぞれの目的に向かって生きて影響し合っていれば面白くなるように脚本は書かれているから、それをサンプルの俳優と客演のみなさんでどこまで行けるかっていうのが今回の作品だと思います。

-そんな中で稽古が進んでいますが、大石さんが難しさや楽しさを感じているところはありますか?

大石:サンプルの俳優さんたちは強烈に何かを共有してるわけじゃないと(古舘さんは)おっしゃってましたけど、僕は稽古でサンプルの俳優さんの嘘の無い、ずるしてない感じを目の当たりにして…自分はなんて浅はかだったんだと思いました…。(古舘さんは)岩松さんの口語は難しいともおっしゃってましたが、例えば古舘さんと古屋(隆太)さんが喋ってるのを見てると、すごく口語劇になってると感じます。言い淀んだり、言葉をくり返したりしているのが全て台本どおりで。まぁ当たり前なのかもしれないですけど、それが群を抜いてすごいなって。一言一句そのままで口語劇を立ち上げる。勝手に「あ」とか入れてないんだって驚きました。

古舘:でもそれが今回は、また難しいんですよ。いつもは松井は気になるところは言うんですけど、許してるところは許してるんで…今回はきっちり岩松さんの脚本を守らなきゃならないっていうのでやってるのが、僕らサンプルの俳優でもいつもと違う難しさを経験してますね。

大石:それを俳優として見ているのは凄く面白いです。だから、そういうサンプルの人達と僕含め今回初めてサンプルに参加する人達も強烈な人達が多いから、それがぶつかってどういう感じになるのはすごく楽しみですね。

-最後にお客さんに向けて一言お願いします。

大石:今回は具象舞台だったり、俳優さんも多く出ていたりして、雰囲気が結構普段のサンプルの公演とは違うから、新鮮な面白さがあって、いつものサンプルを観ている人も楽しめるものになるんじゃないかと思います。これからの稽古で松井さんのウイルスがちょっとずつ繁殖していってどんな感じになるかも楽しみですね。あとは、僕は今すごく不安なんです。俳優もほんとにすごい人達が集まっているので、お客さんは終わったあと、僕のことを覚えないんじゃないかと…!なので、なんとか僕のことを覚えて帰っていただけたら嬉しいです(笑)。

古舘:色々と難しそうな事も言いましたが、『蒲団と達磨』は本当に面白くて分かりやすい戯曲だと思うので、そこは心配なく来て頂ければと思いますし、いつもサンプルを観てくださっている方にはまた違った作品をサンプルの俳優たちがどう乗りこなすかをぜひ観ていただきたいです。サンプルを初めて観る方には、この時代で右肩上がりの頂点に居た頃の日本の時代劇を気楽に楽しみつつ、でも底の知れないモノが描かれると思うので、それを楽しみに観に来てください。
僕としても俳優生活で最初で最後の(笑)…金字塔にしなくてはならない作品だと思うので、その目撃者になっていただけたらと思います。

※1:岸田戯曲賞…岸田國士戯曲賞
※2:『水の戯れ』…M&Oplaysプロデュース『水の戯れ』(作・演出 岩松了)
※3:新倉…新名基浩の演じる役名
※4:ままごと…2009年に、劇作家・演出家の柴幸男によって旗揚げされた、柴幸男の作品を上演する団体。
※5:『通過』…『通過』(作・演出 松井周)。2005年、初演。