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『遠足の練習』から『永い遠足』への旅(3)

最終回は、雑誌「サンプル」vol.1(特集:変態)と、サンプル・クラブについて。

サンプルでは今年度、「サンプル・クラブ」という会員制の集まりを行っています。サンプルのメンバーとともにどこかへ行ったり、稽古見学にお招きしたりしながら、ゆるやかにサンプルの活動に触れていただこうという集まりです。先月は、文学座アトリエの会『未来を忘れる』(作:松井周/演出:上村聡史)を観劇してその後にお茶をしました。


左:『未来を忘れる』観劇後のお茶会(10/22)/右:雑誌「サンプル」編集会議(4/20)

4月20日にはサンプル・クラブで「雑誌『サンプル』編集会議」を開催。編集者・ライターの九龍ジョーさんをお招きして、サンプル・クラブの方々とともに、『永い遠足』会場で販売する雑誌「サンプル」vol.1のテーマ「変態」について、雑誌にどう取り上げていくか話し合いました。
また、この頃から、山崎健太さん(早稲田大学大学院文学研究科表象・メディア論コース博士課程在籍)にも加わっていただき、雑誌「サンプル」の作業が始まります。

こうして半年間、雑誌編集の作業と『遠足の練習』〜『永い遠足』の創作過程を並行して行ってきたことが、今回の『永い遠足』の作品内容に影響を与えていると思います。

たとえば、雑誌「サンプル」のコンテンツを検討する中から「共進化」という概念に関心をもちました。
乱暴にまとめると、共進化とは、環境に適応して一方向的に自然淘汰〜進化が起こるのではなく、複数の種の進化が互いに影響し合いながら、進化の方向自体が複数あるというような考え方です。一つの種がある方向に進化すると、それと関係の強い別の種もその進化に対応して進化する…複数の種の間の複雑な関係の中で次々と、放射状に様々な方向に進化が生まれるというようなイメージ。

サンプルのF/T09秋参加作品『あの人の世界』や文学座アトリエの会『未来を忘れる』など、松井作品の中で「進化」が取り上げられることはこれまでもありましたし、サンプル前回公演で再演した『地下室』では、iPS細胞なども話題に登場しています。「変態」というテーマを「アブノーマル」や「変身/変装」という意味合いで捉えるだけでなく、「生物学的な変態」としても考えることができるのではないか。その切り口の一つとして「共進化」という概念は示唆に富んでいると思いました。

そうして、『遠足の練習』の稽古開始直前の7月8日(月)、『生物から生命へ 〜共進化で読み解く』(有田隆也著/ちくま新書)を課題図書に、サンプル・クラブで読書会を行いました。参加者の方々にとっても刺激的なテーマだったと見えて、それぞれの人生観や関心がある領域に引きつけて話が盛り上がりました。


左:女装座談会(9/27)/右:小泉明郎×松井周対談(10/7)

10月の『永い遠足』稽古と並行して、9月中旬から雑誌「サンプル」の具体的な記事作成の作業を行ってきました。

まず、九龍ジョーさんのコーディネートで実現した「女装座談会」。これは大変刺激的でした。ライターの鈴木みのりさん、モデル・女装男子のKoyuki Katie Hananoさん、女装雑誌『オトコノコ時代』編集長の井戸隆明さん、九龍さん、松井周の5人で、社会における性…ジェンダーやセクシュアリティから、さまざまなカルチャーのなかでの変態と演技・演劇まで、様々なトピックが話題に乱反射して大変面白かったです。

また、小泉明郎さん(アーティスト)と松井周の対談では、ジャンルの異なる2人のアーティストが社会と向き合いながら思考し続けている「フィクションの力」についての話が深まりました。特に、小泉さんが継続的に取り組んでいる太平洋戦争、神風特攻隊の当事者の方々の記憶と極めて強い力を放つ儀式についてなど、演劇との関連を強く感じました。

詳しい内容は雑誌の雑誌「サンプル」の本誌でご確認いただくとして、稽古過程で様々な領域の方々と「変態」をテーマに議論をしてきたことが、『永い遠足』という作品の端々から醸しだされていると思います。

ちなみに、小泉明郎さんには、初日11月17日(日)18時の回のポストパフォーマンストークにもお越しいただきます。『永い遠足』をどのようにご覧になるか非常に楽しみです。
また、当初雑誌にご登場いただきたいとお声掛けして、ご多忙のため調整が付かなかった哲学者の千葉雅也さんに11月21日(木)14時の回のポストパフォーマンストークへご出演いただけることになりました。10月に発売された千葉雅也さん初の単著『動きすぎてはいけない』は、哲学理論書でありながら、創作にも、一般生活にも示唆を与える、まさにクリティカルな一冊です。

『永い遠足』いよいよ開幕です。にしすがも創造舎でお待ちしております。
雑誌「サンプル」vol.1も併せてどうぞよろしくお願いします。



【文:野村政之】

(おわり)