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『遠足の練習』から『永い遠足』への旅(1)

サンプルではこの夏、テスト・サンプル03『遠足の練習』の滞在制作を約2週間、新潟県津南町・旧上郷中学校で行い、8月10日(土)に十日町市の「まつだい農舞台」ピロティで上演しました(「大地の芸術祭の里 2013夏」プログラム)。
11月17日(日)に初日を迎えるF/T13参加作品『永い遠足』は、この『遠足の練習』をベースとしています。10月から森下スタジオでさらに稽古を行い、現在、公演会場でもある「にしすがも創造舎」体育館で最終段階のクリエーションを行っています。

今回の一連のクリエーションは、最近数年間のサンプルの活動の集大成とも言えるものだと思います。
・松井周が第55回岸田國士戯曲賞を受賞した『自慢の息子』(2010年)以降、サンプルが磨いてきた、キャスト・スタッフのチーム全体での集団創作的な作品づくり
・2011年のリーディング公演『文学盲者たち』から始まった実験的企画「テスト・サンプル」
・2012年、大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレに参加し、旧清津峡小学校に約1ヶ月滞在、ワークショップ~公開制作を経て発表した、テスト・サンプル02『キオク REVERSIBLE』(昼のインスタレーション/夜の演劇公演)
・今年、旧上郷中学校に滞在しながら、ワークショップと稽古を行い、まつだい農舞台ピロティの半野外空間で上演した、テスト・サンプル03『遠足の練習』
いずれもサンプルにとっては新たなチャレンジとなるような活動で、この過程で得た様々な経験やノウハウが、『永い遠足』の創作のあり方に少なからぬ変化を与えています。

『遠足の練習』
『遠足の練習』©Osamu Nakamura

『キオク REVERSIBLE』の経験から、『遠足の練習』では、越後妻有の非劇場空間でゼロから作品を立ち上げるために舞台装置の多くを現地調達しました。
『永い遠足』(と『遠足の練習』)は、各地至る所の駐車場で上演できそうな「軽トラ演劇」です(笑)。舞台の床、壁などの基本部分は、7月に五反田の舞台美術研究工房・六尺堂で組み立てて、軽トラックともども越後妻有に運送しました(なので、舞台を荷台に載せたまま公道を走行できるように設計されています)。そして色塗りや装飾を旧上郷中学校とまつだい農舞台で行い、『遠足の練習』上演後、また軽トラックで東京に戻して保管し、再度『永い遠足』の舞台として使用しています。
つまりこの軽トラ舞台は半分「越後妻有産」です(笑)。8月3日に上郷で地元の皆さんの参加を得て行った舞台美術ワークショップ(講師:杉山至)で、旧上郷中学校の隣を流れる信濃川の河原から採集してきた流木や傘の取手、近くのホームセンターで購入した物品の数々が取り付けられています。


杉山至ワークショップ@旧上郷中学校

加えて、まつだい農舞台での上演では、周辺にあった可動式の遊具や草木、旧上郷中学校に残されていた備品を拝借して、仮設的に手を加えて装置に変えました。これと同じことを、にしすがも創造舎でも行っています。今回の舞台上に配置されているモノの3分の1くらいは、にしすがも創造舎に保管されていたり、敷地内で不要になっていた物品をお借りしています。(また3分の1は『遠足の練習』でも使っていたモノです)
サイトスペシフィック(場所に特化した)な表現というわけではないのですが、クリエーションを行った場所から得た様々なモノを作品に取り込むこうしたあり方は、演出の表面的な部分だけでなく、戯曲・演技といった作品の中身にも変化をもたらします。想定していなかった要素や偶然的な出逢いを作品に取り入れることができ、プロセスの中で様々な方向に発想が放射・反射して、メンバー個々人の発想力や集団創作のマンパワーを越えた、より先の読めない、刺激に満ちたクリエーションが生まれる。こういうプロセスは非常に愉しく、誰が意図したわけでもない、予想もしなかった方向に作品が繁茂していく驚きがあります。

また、この2年間の廃校での滞在制作の経験は、作品の中身だけではなく、上演から見えない部分にも生かされています。旧清津峡小学校でも、旧上郷中学校でも、家庭科室をお借りして炊事を行うなど、廃校の既存の空間を創作活動にフィットした生活環境へ整えていくことを試みてきました。今回の『永い遠足』では、メンバーはそれぞれの自宅から通っていますが、にしすがも創造舎(旧朝日中学校)で過ごす時間はこれと同じ…リラックスした創作環境につながっていると感じます。
新潟と東京という地域の違いはあれ、「廃校になった小中学校」という共通のインフラの上にクリエーションを育む方法を、近年、サンプルなりの形で試行してきたことが土台になっているわけです。


旧上郷中学校にて(Facebookアルバム

この夏の『遠足の練習』は、今回のF/Tでの上演をにらんで、『永い遠足』参加メンバーが予定のつく限り現地を訪れて創作しました。そうしたこともあり、個々のキャスト・スタッフの参加スケジュールの違いなどの不確定要素をもプロセスの一部と捉えて、無理に計画に沿わせるのではなく、随時、刻々の作品にうまく取り込んでいく集団としての構え、チームの呼吸が生まれているのではないかと思います。
自分たちで全てを用意するのではなく、既にあるモノを利用して、慌てず騒がず、不確定なことを粛々と作品の実りにつなげていく…「風通しのよさ」みたいなこと。これはまさに今、にしすがも創造舎での最終段階の創作を行うなかで、過密都市・東京にありながらも、実感しているところです。
言い換えれば、まだ今も、新潟の…上郷や松代の風が吹いているような心地がするのです。(今、現在進行形で西巣鴨の空気が混じろうとしています)
こういう「風穴」「気孔」の多い現場のあり方は、ずっと東京の劇場(だけ)で作品づくりを行っていたらまず生まれていなかっただろうと感じます。

サンプルが今年、新潟と東京を移動しながら培ってきた『永い遠足』を、ぜひ沢山の方々にご覧頂きたいと思います。

【文:野村政之】

第二回につづく)